本展は東京藝術大学美術学部建築科1年の椅子制作成果展です。
今年のテーマは「食ー椅子、ちょっとしたフルーツを添えて」。約20cm×約3mのタモ材を主材としています。
昨年7月からデザインを開始し、度重なるエスキースにより案を詰め、10月に1ヶ月間かけ主に手作業で無
垢のタモ材から実際に椅子を制作しました。
建築科1年15人、ひとりひとり全く違った食の捉え方、また椅子の作り方によって、個性あふれる素敵な展覧
会になっています。
目で見るだけでなく、実際に触れて、座って、15人分の椅子を是非ご賞味ください!!

椅子展
食-椅子、ちょっとしたフルーツを添えて
S-eat with a bit of fruit

2015年1月13日[水] – 1月31日[日]
8:00-10:30, 12:00 – 21:00
closed: 1/18,25

制作プロセスWEBサイト http://s-eat.tumblr.com/

■過去の椅子展
椅子展2015″ARCANA CHAIR”
椅子展2014″サブカルチェア w”

鵜飼瞭汰「いつまでも大人しくしてると思うなよ？」 私は何時もお尻の下で虐げられている悲痛な椅子の叫びを耳にした。 その思いを乗せた椅子は、人を食ったように、独りでに座面が転がりそっぽを向く。 フルーツを手にした時のみ重心が狂い、座ることを拒むことができるのである。

越智俊介「蓮の実椅子」 添えられる果実として蓮の実を選び、ベッドの上で食事をとるための椅子をつくった。 蓮の実のように空いた穴に食器を並べ、自分もまたそこに座り食事をとる形態を構想した。

笠松咲樹「S-eat with a lot of fruits」 根津の果物屋「寿」のための椅子。果物があふれ出すように陳列されている店先に置かれることを想定している。その場に馴染みつつ、ユニークで新鮮な風景を作り出す椅子を目指した。 店頭の実測に基づき、ダンボールやその持ち手の穴の寸法を引用している。

上林修司「ウワバミと象」 …ぼくが6歳の時のことだ。「本当にあった話」という原生林のことを書いた本ですごい絵をみた。猛獣を飲み込もうとしている大蛇ボアの絵だった。再現してみるならこんな風だ。

木下直哉「抽象」 ルネ・マグリットの絵画”The Son of Man”、ここに描かれた顔の見えない男は、額縁の中で永遠に立つことを運命づけられてしまった男は、しかしはたして我々の知らないところで食事を摂ったりもするのでしょうか。添えられたフルーツの奥にあるはずの彼の顔は、どんな表情をしているのでしょうか。そのようなとどまることのない、答えのない疑問をとめどなく考えていたら、ひとつの形が生まれました。

島津利奈「Holy Trinity」 ちょっとしたフルーツが添えられた食事風景を想像する フルーツがなくても食事として成立している しかしそこにフルーツがささやかに添えられるだけで彩り、新鮮さ、ちょっとした贅沢さが加わり、ただの食事を満ち足りたものとする 日常生活で「ちょっと腰を下ろそうか」「少し休憩しようか」となる場面を想像する その場に椅子がなくても、私たちは階段を見つけたら腰を下ろそうとする 階段はすでに椅子としての役割を持っている しかし階段にこの木塊をささやかに添えることで心地よさ、ちょっとした贅沢さが加わり、ただの階段に少し変化が生まれる そしてまた、階段に添えた瞬間にこの3つの木塊は椅子となる

島田澪 「とろこんちょこ椅子」 『食ー椅子』というテーマについて考えた時、食事は椅子に座りながら摂るということに限らず、立ち食い・歩き食い・床に座って食べることも身近にあるものだと思った。そこで普段は椅子として使うが食べる時にだけ机になり、床に座って食事を摂れるような作品を作った。また食べるものも特定し、チョコにとろろ昆布を巻いて食べる自己流お菓子「とろこんちょこ」専用の椅子とした。 『ちょっとしたフルーツ』は棚のレイアウトに活かし、フルーツの構造がレイアウトに反映されている。多くのフルーツは中央部分に種があり、その周りには可食部である実が詰まっている。これを置き換えて棚の中央部を貯金箱とし、その周りにチョコを詰めることで、『実』である「チョコ」が無くなった時に、貯金箱に貯めた『種』である「お金」を持って新しくチョコを買いに行くことができる。

谷口紅葉「椅子(遺伝子組換えでない)」 ポテトチップスと遺伝子組換えの関係

田原花帆「重椅子」 おせちをきっかけに椅子を考えた。 お重を開けていく動作をそのままにおせちの外見と実際の中身とのギャップを椅子に再現した。 おせちを囲む時間がそうであるように、この小さな椅子を通してあなたと相手(1人以上)の時間は共有され、たわいもない話や笑い話…幾つもの会話が生まれるだろう。

鶴田航「pre-chair」 食の歴史は加工の歴史である。 技術の専門化により加工は外部化されていった。 そこで潜在化された加工工程の顕在化を試みる。 荒々しくむきだしにされた加工工程。 そこで現れてくるのは加工そのもの。 樹木と椅子のあいだ。椅子未満。 pre-chair.

白家明「無意識」 「食べる」行為とは、食べる人の好き嫌いやその人が接触してきた文化によって食べられる か否か、 どう食べるかが変わっていき、絶対的なスタイルは存在しない。この特徴は「座る」行為に も共通しており、 使い手側の要求によってイスの形は変化し、多様性にあふれている。 そのため、本当のイスの形とは人の意識の中に存在するのではないかと思えた。 この作品は、全体としては見慣れた「イス」とかけ離れた形をしているが、 どこかに「イスらしさ」が残っているため、使い手の意識の中にあるイスの形を呼び起こす。 試しに腰をかけたり、肘を置いたりするうちに、座っているイスは意識の中のイスにどんど ん近づいてくる。 イスを作らずにイスを作るという試みでした。

藤村みなと「食椅子=∫食卓」 レオナルド・ダ・ビンチの絵画《最後の晩餐》、1卓の食卓をキリストと弟子たちが囲っている晩餐の場面が、食卓の上のものもそのまま1脚の椅子へと曲げられていく。

間杉杏「腰かけ膳」 一人一脚の、食事のための椅子。いつでもどこでも、膝の上がその人だけの食卓となる。

村田夏菜子「sandwichair」 屋台よりも親密な食を介したコミュニケーションツールとしての椅子。 様々なものを添えながら、使う場所/相手によってアップデートされ続け、景色に馴染んでいく。

湯浅綾佳「思い出＜フルーツ＞」 人生にフルーツ＜思い出＞を添えませんか？ 食の思い出として自分の使ってきた食器の歴史を、目に見える形で蓄積できる椅子を提案する。身長を柱に刻み込んだものをイメージとして、背面の柱に食器を蓄積していく。一生に一脚、食卓を囲む椅子として使われることで椅子はその人そのものの存在を感じさせるものになる。子供が巣立ってしまって空いてしまったダイニングの空席にも思い出を添える。